チタンの種類と特性(チタン、チタン合金の性質、特徴)
チタン材料は、主に純チタンとチタン合金の2種類に分けることが出来ます。純チタンはJIS1種、JIS2種などであり、チタン合金は代表的なものとしては、高力合金系のJIS60種(通称6−4合金と言われています。)やJIS61種(通称3−2−5合金と言われています。)、また15−3−3−3合金といったものがあり、耐食系合金としては、JIS11種、JIS12種(パラ入りチタン合金と言われています。)などがあります。 またチタンの金属組織にはα相(稠密六方晶)といわれるものと、β相(体心立方晶)といわれる2種類があります。純チタンは常温ではα相であり、6−4合金はα相、β相両方を持つα−β合金です。また15−3−3−3合金は準安定のβ相をもつ、β合金です。 |
チタンの比重は鉄とアルミの中間であり、軽い金属です。また比重の割には強度が高く、特にチタン合金は実用金属のなかでも最大クラスの比強度をもっています。チタンは耐食性に優れていますが、これはチタン材の表面に形成される酸化チタンの皮膜が強固であることにより、特に塩素イオンに対しては優れた耐食性を発揮します。しかしその反面、化学的に活性であるため、酸素や窒素と反応しやすいという一面もあります。その他欠点としては特に純チタンにおいては磨耗しやすいということがあげられます。またチタン及びチタン合金は非磁性の金属でもあります。 |
純チタンと言われるものにはJIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種などがありますが、材料の特性としては1種がもっともやわらかく、2種、よりは3種とだんだん硬くなります。またチタンの純度は1種が最も高く2種、3種、4種とだんだん低くなっていきます。 また航空機などに使われることが多いJIS60種(64合金)は非常に高強力ですが、難削材であり、加工が難しく、歩留まりが悪くなりがちである、などの問題点があります。この加工性の問題に着目して開発されたのがβ系の15−3−3−3合金などであり、64合金とほぼ同等の強度を持ちながら、冷間での加工性は64合金より優れているのが特徴です。 |
チタンの硬度 |
よくチタンの硬度に関するお問い合わせをいただきますが、チタンは比強度などには優れていますが、それほど硬い金属ではありません。あくまで参考値程度のものですが、HV(ビッカース硬度)でJIS1種で110以下、JIS2種で110〜155、JIS60種(64合金)で280以上程度になります。 |
溶融点 | 1,668℃ |
密度 | 4.51(g/cm3) |
原子番号 | 22 |
電機比抵抗 | 47〜55(μΩ-cm,20℃) |
電気伝導率 | 3.1(%,Cuと比較して) |
線膨張係数 | 8.4×10−6(cm/cm/℃,0〜100℃) |
比熱 | 0.12(cal/g/C) |
透磁率 | 1.0001 |
ヤング率 | 10.64×104N/mm2 |
種類 | 規格、相当品種 | 特徴 |
α合金 | 5Al−2.5Snなど | 64合金ほどではないが、低温から高温まで安定した強度をもつ。 |
α−β 合金 |
JIS60種(64合金)など | 強度に優れているが、難削であり曲げ加工なども難しく、歩留まりが悪くなりがちである。 |
β合金 | Ti15−3−3−3 合金など |
64合金と同等以上の強度をもつが、冷延性に優れ、64合金よりは加工性が良い。 |
長所 | 欠点 | ||
純チタン JIS1種、2種など |
耐食性に優れる | 磨耗に弱く、焼きつきやかじりなどが発生することがある。 | |
比較的加工しやすい (絞り性なども良好であり、切削性 もSUSとほとんど同レベルである) |
強度的には64合金などに対してはおちる。 | ||
比重が約4.5であり、軽い。 | 焼入れなどで強度を調整することが出来ない。 | ||
高強度 チタン 合金 |
αβ合金 64合金 (JIS60種)など |
高強度であり、高温下でも安定した強度を保つ。 | 難削であり。歩留まりが悪くなりがちである。 |
時効処理が可能である。 | 磨耗に弱く、焼きつきやかじりなどが発生することがある。 | ||
β合金 15−3−3−3合金など |
64合金と同等以上の強度がある。 | 加工性は良いといっても、純チタンに比べれば加工性は劣る。 | |
冷延性は64合金よりはよく、64合金よりは加工しやすい。 | |||
時効処理が可能である。 | 磨耗に弱く、焼きつきやかじりなどが発生することがある。 | ||
耐食チタン合金 パラ入りチタン合金 (JIS11種、 12種)など |
純チタン以上の耐食性を持ち、耐隙間腐食性なども純チタンよりは優れている。 | 磨耗に弱く、焼きつきやかじりなどが発生することがある。 | |
純チタン並みの強度を持ち、ジュラルミンなどより高強度である。 | 強度的には64合金などに対してはおちる。 |
参考1:時効処理とは、焼入れと全く同じというわけではありませんが、処理することにより強度をあげることが可能です。 |
参考2:チタンに共通の長所として、比強度に優れていること、耐食性に優れていること、軽いことがあげられます。それに対して共通の欠点として、磨耗に弱いということがげられます。 |